怨み赤子
少しの雑音と共に、昼間ユキがトイレで話していたことが流れて来る。


勉は自分の名前が出て来た瞬間険しい表情に変わった。


勉がノートをかしてくれない。


今の勉とは結婚したくない。


勉は金遣いが荒い。


そんな悪口が続けざまに流れて、勉は見る見る内に真っ赤な顔になって行く。


「これ……ユキの声だよな?」


「もちろん」


あたしは大きく頷いた。


勉だって、そんな質問をあたしにしなくたってわかっているはずだ。


ただ、認めたくないだけだ。


そこで畳み掛けるようにしてあたしはユキとカラオケへ行った時の事を話した。


「ユキはあたしにお礼も言わずに当たり前みたいにお金を半分しか出さなかったよ。


それだけじゃない、カナミが小説のコンテストで入賞した時もユキは……」


今までユキがしてきたことを、休むことなく話すあたし。


話を聞けば聞くほど勉はあたしから視線をそらせて、肩を小刻みに震わせた。


自分の彼女が友人たちにこんな事をしているなんて、考えてもいなかったのだろう。


でも、ユキの行動を見ていなかった勉も勉だ。
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