怨み赤子
あたしはそう言い、ボイスレコーダーを取り出した。


そして勉がユキの悪口を言っていた時の事を聞かせたのだ。


「なにこれ? 本当に勉が言ったの?」


ユキの表情は一瞬にして険しくなる。


ユキにとって勉は忠実な犬のような存在だったのだろう。


自分が知らないところで自分の悪口を言っているなんて、許せないのだ。


「ユキもさ、あたしやカナミみたいにコンテストに参加してパパッと入賞しちゃいなよ。


そうすれば勉もきっとユキの事を見直すと思うからさ」


あたしがそう言うと、ユキはしかめっ面をした。


「コンテストなんて、なんで参加しなきゃいけないの?」


「だってユキはデザインを作るのが得意じゃん。何かをデザインしてお金をもらったらプロなんでしょう?」


あたしの言葉にユキは返事に詰まった。


自分が適当な作品ばかりを作り、お金を奪って来た事を自覚している証拠だ。


「で、でもコンテストとか興味ないし」


ユキはそう言い、あたしから視線を逸らせた。


興味がないんじゃない。


落選することが怖くて参加ができないのだ。
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