怨み赤子
過去の記憶
それからもツバサ君は休憩時間の度にあたしに話かけてきて、帰るころにはぐったりとしてしまっていた。


あからさまに無視をして避けていると言うのに、ツバサ君にはそれが通用しないのだ。


「月乃、大丈夫?」


1人で教室を出ようとしていると、カナミが慌てて駆け寄ってきた。


「カナミ……あんまり大丈夫じゃない」


あたしはそう返事をして、また顔をしかめた。


放課後に教室に残っているとまたツバサ君に話しかけられるかもしれないと思い、1人で帰ろうとしていたのだ。


「一緒に帰ろうよ。1人で帰ってる所にツバサ君が来たら、また面倒くさいから」


カナミはそう言い、あたしの隣を歩き始めたのだった。


「ツバサ君ってさ、ちょっと仲良くなるとすぐに人の体をべたべた触って来るんだよね」


歩きながらカナミがそう言い、何かを思い出したように身震いをした。


そういえば以前はツバサ君はカナミにしつこくつきまとっていたっけ。


あの時はまだカナミの事をよく知らなかったからなんとも思わなかったけれど、カナミはすごく困っていたのかもしれない。


「触って来るって……?」


「さすがに、お尻とか胸とかは触ってこないけど、肩とか背中とか頭とかさ。好きな人が相手ならドキッとするけれど、ツバサ君って誰彼問わずいい顔してるしあたしすっごく苦手でさぁ」


そう言い、カナミはしかめっ面のままため息を吐き出した。
< 65 / 143 >

この作品をシェア

pagetop