怨み赤子
☆☆☆

家に帰って自室へと入ると、白い壁に表彰状がかけられていて自然とそれが視界に入った。


水彩画で小さな賞をもらった時の物だ。


あたしはその表彰状を見ながらぼんやりと思い出していた。


『あの絵の場所には俺が連れて行ってやったんだぜ!』


あたしが受賞したあと、ツバサ君が自信満々にそう言っていたことを思い出す。


この絵を描いていた時偶然ツバサ君が通りかかり、そこで少しだけ会話をした。


ただそれだけの出来事が大きく大きく膨らんで、クラスメートたちに知れ渡ってしまったのだ。


『ツバサ君と月乃は2人で遊びに行くくらい仲良しなんだね!』


『付き合ってるの?』


『あの絵を描いたのってツバサ君のおかげだったんだぁ』


ツバサ君の性格がまだ知られていない時だったから、クラスメートたちに散々そんな風に声をかけられたことを今でもよく覚えている。


その時はクラスメートたちが何を言っているのかわからなくて、ただ首を傾げるばかりだった。


でも、ツバサ君の虚言はその頃からすでに始まっていたのだ。


あたしと仲が良いと言うデマがうまく出回ったのを見て、ツバサ君の行動はエスカレートし始めた。


嘘をつけば、簡単に女の子と仲良くなることができる。


そんな風に勘違いをしたのだ。
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