怨み赤子
「2か所本屋さんに行ったんだけどね、最初に行った本屋ではユキの漫画に付き合ってあげたの。

あれが面白いとか、これがおすすめとか。2人で漫画コーナーで色々教えてもらってね」


「そうなんだ」


あたしは頷く。


「でもね。ユキはあたしが小説が好きな事を知ってたのに、小説コーナーに寄ろうとしなかったの」


カナミはそう言い、あたしを見て曇った表情を浮かべた。


「ユキらしい性格だね」


あたしは小さく呟く。


ユキはいつでも自分の趣味の話題を中心にしている。


相手に話が通じなくてもかまわずずっと話をしているのだ。


そしてこちらが「なんの話?」などと聞き返せば「人の話をちゃんと聞いてない」と言われる。


興味がない話をずっと続けられても疲れるだけだし、真面目に聞けるほどおもしろい話でもないのに、ユキはそれに気が付いていない。


他人の趣味には興味を示さないのに、自分の趣味をどんどん押し付けている感じだ。


「それでね、2件目の本屋に入った時あたし最初から小説コーナーに行ったの。


でもユキは、ずっと1人で漫画コーナーで立ち読みしてた。あたしが声をかけるまで、ずっとだよ?」


カナミの声は徐々に小さくなり、やがてそれはため息に変わった。
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