怨み赤子
「これのどこが弘江を守ってんのよ」


ツバサ君が落としたスマホを取り上げ、動画を再生してクラスメートに見せながらそう言う野村さん


ツバサ君の顔は赤から青に変わり「やめてくれ!」と、わめく。


しかし身長で負けているため、スマホを奪う事すらできない。


ピョンピョンと飛び跳ねて手からスマホを奪おうとする姿に、またクラス中は笑いに包まれた。


みんながツバサ君を見て笑っていたその時、教室のドアが開いてみんなの視線がそちらへ向かった。


弘江と大也が手を繋いで教室へと入って来る。


それを見たツバサ君が動きを止め、2人から視線をそらせた。


「おはよう弘江」


ツバサ君のスマホを持ったまま野村さんが言う。


「おはよう!」


2人はクラス内でもとても仲がいい。


でも、今の状況でどうなるのかみんなが固唾を飲んで見守っていた。


「どうしたの、みんな?」


弘江も教室の異変に気が付いたのか、周囲を見回して首を傾げた。


「弘江さぁ、王子様は1人にした方がいいんじゃない?」


そう言い野村さんがスマホを突き付けて動画を流し始めた。


弘江の表情は見る見るうちにこわばって行く。
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