怨み赤子
「カナミだって、ユキにおすすめしたい小説があったってことだよね?」


「うん。ユキがおすすめしてきた漫画の中には、あたしの好きな小説が原作になっているものもあったの。


それを知らずに漫画をおすすめしてくるから、原作の魅力も知ってほしいと思ったんだけどね……」


あたしはカナミの肩を抱いた。


相手からすればどうってことのない事でも、やられた側が傷ついていることもある。


特にユキの場合は自分より立場の弱い人間を見下しているから、カナミは標的になりやすいんだ。


「なんだかユキといると時々疲れるよ……」


「わかるよ。ユキは自分をしっかり者だと思っているけれど、それは周囲を自分のペースに巻き込んでいるだけだから。


これが常識、あれが普通って口では言ってるけど周囲の目を気にしているだけで相手の気持ちは考えてないと思う」



「こんな話ができるのって月乃だけだから、聞いてくれてありがとう」


カナミはそう言い、あたしから離れた。


「話をきくくらい、いつでもするからね」


あたしはそう言い、ほほ笑んだのだった。
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