怨み赤子
ぼろぼろに
倒れて動かなくなったツバサ君を見て野村さんが小さく笑った。


「ちょっと、こんなところでやめてよ」


その言葉に大也がクラスメートたちを見回した。


その鋭い視線を向けられるだけで身がすくみ、このことは誰にも言わないという暗黙の了解が教室内に広がった。


大也は教室の後方に置かれている文房具入れからガムテープを取り出すと、それを気絶したツバサ君の口にはりつけた。


続いてツバサ君の両手を背中へと回し、親指同士を結束バンドで固定した。


みんな、大也の動きを見ながらもなにも言わなかった。


ツバサ君は掃除道具入れに押し込まれると、ホッとしたような空気が流れる。


見えない場所に隠されてしまえば、もう知らないふりができるのだ。


掃除道具入れが閉められると同時に、教室内には普段のざわめきが戻ったのだった……。
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