怨み赤子
「おい、弘江」


「え……?」


急に大也に名前を呼ばれた弘江が慌てて近づいていく。


弘江はまだ気が付いていないのだ。


大也がツバサ君に手を上げないと言う事がどういう意味なのか。


一方ツバサ君はすでにその意味を理解しているようで、「あ……」と、小さく声を出した。


しかし、大也への強い恐怖心からそれ以上の声は出ない。


次の瞬間、大也が弘江の前髪をわしづかみにしていた。


「いっ……痛いじゃない!」


弘江が悲鳴に似た声を張り上げて抵抗する。


しかし、力で大也に勝てるはずがなかった。


いくら暴れて見ても、いくら暴言を吐いてみても、大也はびくともしない。


大也はまるで弘江をおもちゃのように殴りつけた。


手加減しているように見えるけれど、弘江の体は壁まで吹き飛ばされた。


「やめろ!」


弘江の体が壁にぶつかった瞬間、ツバサ君がそう叫んだ。


大也はちらりとツバサ君の方を見て、そしてまた弘江へと向き直った。


「や……やめてよ……」


弘江が震えた声で言う。


しかし大也はとまらない。


弘江の体に馬乗りになると、その顔を立て続けに殴りつけた。


鼻血を吹き、涙を流す弘江。
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