怨み赤子
最初はとても信じられなかったが、何度か通って話を聞くうちにそれが本当の事なのだとわかりはじめた。


この教会で怨んでいる相手の事を考え、そして怨みを晴らしたいと強く願う。


その気持ちが逆さまの十字架の神様に通じれば、怨み赤子を身ごもる事ができるのだ。


赤子は自分と全く姿形になり、あたしの代わりに怨みを晴らしてきてくれるのだ。


その間、あたしは1日3回、この逆さ十字に祈りをささげる。


たったそれだけで、ユキにもツバサ君にも重たい罰が下った。


でも、あたしが怨む人はまだいたんだ。


お腹はどんどん膨れ上がり、体内からお腹の皮膚を押し上げている人の手形が見える。


「ちょっと……!」


リサさんが慌ててかけより、その様子を見つめる。


あたしは苦痛にうめき声をあげてその場に横になった。


今までとは何かが違う。


赤子がお腹の中で暴れ回っているのを感じる。


「この子、手から出ようとしているわ!!」


リサさんが叫ぶ。


「え……? なに?」


あたしは額に汗を浮かべてそう聞いた。


「怨み赤子は必ず足から生まれるものよ。逆さ十字架と同じように」


リサさんはそう言い、あたしの腹部を強くマッサージしはじめた。


逆子を元に戻そうとしているのだ。


腹部の活動は次第に激しさを増していき、何かが皮膚を突き破ろうとしているのがわかった。
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