怨み赤子
野村さんの言葉に周囲にいた生徒たちから笑い声が漏れた。


「制服ぬれちゃったし、どうしてくれんの？」


そう聞かれ、ユキは数歩後ずさりをした。


それでも手にはまだジュースの缶を持っている。


「クリーニング代、出してくれるんでしょ？」


「でも……お金ないし……」


ユキがそう言うと、勉が立ち上がりユキに近づいて行った。


元々付き合っていたしユキを助けるのだと誰もが思っていたその時だった。


勉はユキのスカートのポケットに手を突っ込むと、財布を抜いたのだ。


「ちょっと、何するの！」


これにはさすがにユキも怒りはじめた。


しかし勉は気にする様子もなくユキの財布から5千円札を抜くと野村さんに渡したのだ。


野村さんはそのお金を受け取り、ニヤッと笑う。


このクラスにユキを守る人間はもういないと言う事がわかったからだ。


その瞬間から野村さんにとっての遊び道具ができたことになる。
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