怨み赤子
「あんた、いっつも細かい事ばかり口うるさく言ってるけど、自分には甘いよねぇ」


野村さんがユキを見下してそう言う。


それに賛同するように、野村さんと仲のいい女子たちがユキを取り囲んだ。


ユキはその中央で大きな体を小さくして、野村さんを正面から見る事もできずにいた。


「あれ、やばいよね」


カナミがあたしにそう囁いてくる。


「心配してるの？」


そう聞くと、カナミは頷いた。


「カナミは優しいね。ユキに散々バカにされていたのに、ユキがイジメのターゲットになると心配するなんて」


あたしはそう言い、ニコッとほほ笑んだ。


「それはそうだけど……」


ユキにやられていたことを思い出したのか、カナミは顔をしかめた。


ユキがえぐった傷口はまだ消えていないようだ。


あたしとカナミはユキが野村さんたちにいじめられているのを横目で見ながら、次の授業の準備を始めたのだった。
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