letter〜この出会いは運命〜
大きな影━━━━━
龍貴院奏にみんなの視線が集まる。
あの有名かつ多大な権力者である彼にステージ横にいる生徒がが怪訝そうな顔を見せたのは初めてではないのだろうか。
スピーチは進行通りに進み客席は活気に溢れる中、舞台裏ではどんよりとした重たい空気が漂う。
舞台裏の生徒の内の1人が静かに声を出した。
それは奏の側近の1人だった。
「龍貴院様、恐縮ながら質問させてください。何故、そこの桜井和歌に固執されるんですか?前の龍貴院様なら桜井和歌を蹴られて行く筈ですが、」
彼はニヤニヤとこちらを嘲笑うかのような表情をする。
龍貴院奏は歴代のレックス、レジーナ達の中で1番冷酷無慈悲と呼ばれていた。
普通の生徒達には優しくする。
しかし家を陥れようとしたり、彼の気に入らない事があればすぐに退学にし、家ごと潰す。これが彼のやり方だった。
変わったのは余りにも突然、それが理由と言っていいのか分からない程の些細な事件。
立候補者総会の時からだった。
レックスルームには側近以外立ち入らせなかった彼が初めて入れた女。
初めて来いと命令した女だった。
「何故か……?そんなものは簡単なことだろう?俺の提携相手だよ。」
奏は余裕そうな顔で彼を見つめる。
「はっ……!提携相手ですかっ?!バカバカしい!そんな見え付いた嘘をつくなんて貴方らしくありませんよ。第一龍貴院家がそんな女と提携する必要もないでしょう。」
なんか散々に言われてるなぁなんて考えながらこちらを睨みつける彼に少しばかりの同調を覚えた。
「提携する必要か……。提携を申し込んだのはこちら側で俺だよ。
そんな女呼ばわりねぇ……、まだ気づきもしねぇなんて俺の側近失格だな。お前みたいな能無しを側近にしてたなんてヘドがでるわ。」
奏も彼に嘲笑を送る。
彼は気づき顔を強ばらせた。
「桜井家……、っ!」
彼は崩れ落ちる。