専務と心中!
「いいですね。次は水島の優勝が見たいし。はりきって応援しますか。」

優勝!
見たい!

「できたら、泉さんをぶっちぎって優勝してほしいわ。」
思わず本音をこぼすと、碧生くんはぷぷっと吹き出し笑いした。


学生バイトくん達は週3日出勤してくれた。
男子2人が増えただけで、室内に活気が漲った。
彼らは室長とも進んでコミュニケーションをとった。
室長は上機嫌で終業後に彼らにビールをご馳走した。

……歓迎会は来週ちゃんと予定してるのに……既に、和気藹々。
まあ、職場の雰囲気がイイと、出勤が苦じゃないし、いいね。


専務は金曜日にようやくご出勤された。
もちろん私には関係ない……はずなのだが……。

「やあ。進捗はどうだね?」
お昼前に突然そう言いながら社史編纂室に専務がやってきた。

南部室長が慌てて立ち上がる。
「専務!どうされましたか!」

「いやいや。何か不自由はないかと思ってね。」
ニコニコと室長と話しながらも、専務の目は忙しく動き……私を探し当てた。

かすかに会釈したら、専務の笑顔の質が明らかに変わった。
にへらっ……って。
そんな、うれしそうな顔されたら、ほだされちゃうじゃんか。
てか、怪しいですから。
室長の前で「にほちゃん」とか呼びそうで、怖い。

「そういや、今日はアルバイトくんは来てないのか?」
じりじりと後ずさりしてる私の気持ちがわかってるのかわかってないのか、専務は室長に尋ねた。

「あ、いえ。隣の部屋で撮影中ですわ。……布居くん、彼らを呼んで。せっかくだからご挨拶を、」
「あー、いやいや。仕事の邪魔するのも悪いからね。また、覗くよ。」
専務は、室長の言葉を遮ってそう言うと、そそくさと帰って行った。

「専務、何しに来はったんやろ?」
室長が不思議そうに首を傾げていた。

……私の顔を見るためだけに来た……とも思えないんだけど。
本当に、なんなんだろう?
謎だわ。

でも。
ポケットの中で、携帯が震えてる。

室長に見えないように、こっそりと画面を見た。
専務からの着信履歴。
就業中に、出られるわけないでしょ。

これって、昼休みに電話して来いってことかな。
……メールくれたらいいのに。

ため息をついて、また携帯をポケットに忍ばせた。

タイミングよく、正午を知らせるチャイムが鳴った……。
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