専務と心中!
「……編纂事業が終わった後、膨大な資料群の管理をするために図書館司書の資格を持つ布居さんが抜擢された、と思ってました。だから、ゆくゆくは古文書を読めるようになってもらうところまで、俺らがサポートする、って。なあ?」
D1学生くんが碧生くんにそう確認を取る。
碧生くんがうなずくのを見て、私は生唾を飲み込んだ。
聞いてない。
古文書なんて、勉強したことない。
「そういう専門的なことは、美術館の峠さんが……」
「うん?峠さんって美術史だよ?文献史学は、峠さんだって専門外。いいじゃん。俺達、ちゃんと教えてあげるからさ。チャレンジしてみなよ。」
碧生くんはそう言って、撮影中の御帳面の中を指差した。
「ほら、これと、これ。」
これ、って言われても……。
渋々覗きこんでみる。
……あ、一つはひらがなだ。
異体字でもない。
漢字もあまり崩れてない。
これなら、読めそう。
えーと……
「えゝ……ええ?ってこと?ええ?しやない、か?……こっちは?欠落(けつらく)?」
よくわからないけれど、D1学生くんも碧生くんもパチパチ拍手してくれた。
「正解!」
「ええしやないか、で、『ええじゃないか』って書いてありますね。ご存じですか?伊勢の名物、赤福餅のCMで出てくるんですけど。」
ええじゃないか!?
「知ってる……。CM、昔よく観た気がする……。でも、どういう意味?」
D1学生くんが説明してくれた。
「幕末に流行った社会騒動ですよ。民衆が『ええじゃないか』と騒ぎ踊り狂って町内を徘徊したそうです。なぜか空からお札が降ってきたという記録もありますが、まあ、それは荒唐無稽ですかね。」
「何のために?お祭り?宗教?一揆みたいなの?」
そう尋ねると、D1学生くんは困ったように碧生くんを見た。
碧生くんはにやりと笑った。
「ハッキリとはわかってないんだ。倒幕派の陽動作戦だとも言われてるけど。この史料にはね、米騒動や打ちこわしのように記述されてるんだ。ここの会社は江戸期、脇両替を兼業していた大きな呉服屋だったから、かなり羽振りが良くてね。『ええじゃないか』の暴徒に備えて武装浪人や用心棒を雇ってたみたい。そしたら、女中の1人が流れ者の用心棒と駆け落ちしたんだって。おもしろくない?」
D1学生くんが碧生くんにそう確認を取る。
碧生くんがうなずくのを見て、私は生唾を飲み込んだ。
聞いてない。
古文書なんて、勉強したことない。
「そういう専門的なことは、美術館の峠さんが……」
「うん?峠さんって美術史だよ?文献史学は、峠さんだって専門外。いいじゃん。俺達、ちゃんと教えてあげるからさ。チャレンジしてみなよ。」
碧生くんはそう言って、撮影中の御帳面の中を指差した。
「ほら、これと、これ。」
これ、って言われても……。
渋々覗きこんでみる。
……あ、一つはひらがなだ。
異体字でもない。
漢字もあまり崩れてない。
これなら、読めそう。
えーと……
「えゝ……ええ?ってこと?ええ?しやない、か?……こっちは?欠落(けつらく)?」
よくわからないけれど、D1学生くんも碧生くんもパチパチ拍手してくれた。
「正解!」
「ええしやないか、で、『ええじゃないか』って書いてありますね。ご存じですか?伊勢の名物、赤福餅のCMで出てくるんですけど。」
ええじゃないか!?
「知ってる……。CM、昔よく観た気がする……。でも、どういう意味?」
D1学生くんが説明してくれた。
「幕末に流行った社会騒動ですよ。民衆が『ええじゃないか』と騒ぎ踊り狂って町内を徘徊したそうです。なぜか空からお札が降ってきたという記録もありますが、まあ、それは荒唐無稽ですかね。」
「何のために?お祭り?宗教?一揆みたいなの?」
そう尋ねると、D1学生くんは困ったように碧生くんを見た。
碧生くんはにやりと笑った。
「ハッキリとはわかってないんだ。倒幕派の陽動作戦だとも言われてるけど。この史料にはね、米騒動や打ちこわしのように記述されてるんだ。ここの会社は江戸期、脇両替を兼業していた大きな呉服屋だったから、かなり羽振りが良くてね。『ええじゃないか』の暴徒に備えて武装浪人や用心棒を雇ってたみたい。そしたら、女中の1人が流れ者の用心棒と駆け落ちしたんだって。おもしろくない?」