専務と心中!
碧生くんはとても堪えきれない!というように、肩を揺すって笑い出した。
豪快な笑い声に、ピリピリしてた私も苦笑する。
専務もホッとしたように、変な笑顔を浮かべて、碧生くんと私を代わる代わる見ていた。

「まったく。祖父から聞いてた通りですね。統はギャンブラーと紙一重、なんですね。やばいわ。Graceを見捨てないんじゃなくて、似たもの夫婦だったのかな。」

やっと笑いをおさめた碧生くんの言葉は、私にとって非常に興味深かった。
けど、専務はばつが悪いらしい。

「碧生くん。マダムの話はもう……。」

遮ろうとする専務に、私は少し苛立ちを覚えた。

「ううん。聞きたい。教えて。碧生くん。……いいですよね?お話してくださるって仰ってましたよね?専務。」

専務はうっと詰まって、うつむいた。

私は、専務を無視して碧生くんに尋ねた。

「マダム・グレースもギャンブラーなの?ご家族がカジノの不正で逮捕されたのよね?なのに、マダムはその後もギャンブルをやめなかったの?」

ちょうどいい。
別れた奥様の話を専務の一方的な見解で聞きたくなかった私には、渡りに船だ。
できたら、社長や家政婦さんからも聞きたいぐらいだわ。

……逆に専務は自分の都合のいい話だけをしたかったかもしれない。

肩を落としてため息をつくと、パソコンのキーボードを弾き、競輪のネット中継の画面につなげた。
まだ、決勝戦の投票を締め切ってないらしく、音楽が流れてオッズが映っていた。

「んー。ちょっと語弊があるな。逮捕されたのは、確かにGraceの両親だけど、実際にイカサマしてたのはGraceだったんだよ。彼女が、色仕掛けでディーラーと組んで、両親を大儲けさせてたんだよね?統。」

「……まあ、そういうことだ。」
ふてくされたような専務の返事。

てか、奥様、14歳で色仕掛けって……たくましいなあ。

ん?

でも、奥様は逮捕されてないのよね?
で、専務と奥様は、その後もカジノで遊んでたよね?

……まさか……

「もしかして、……専務も?片棒担いだりしてた?カジノでイカサマしてたの?」

私の疑惑の目に、専務はぷるぷると首を横に振った。

「してないしてない。俺は、別に絶対勝ちたいわけじゃないから。ゲームに参加するのが楽しいだけ。
……まあ、そこが決定的にマダムとは相容れなかったというか。そもそもの行き違いの原因というか……」
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