唯一愛した君へ
『――どーしたん?』
急に声をかけられて、ハッとする。
『…なんでも、ないです』
いつの間に起きたんだろう。
いつもは起こすまで起きないのに。
整ったシンの顔があたしの顔を覗き込む。
あたしはあんまりうまくない作り笑いをしてみた。
ポンッ、と…
頭に手を置かれる。
『なんかあったら、言えばええからな。』
暖かい言葉をかけてくれる。
すっとシンは立ち上がった。
『もうすぐ…寒い季節やなあ……』
そろそろ吐く息が白くなる。
きっとこの噴水は、嫌がられてしまうだろう。
『嫌やなー。俺、冬苦手やねん!』