唯一愛した君へ





『おねーさん、いいもん持ってるや〜ん。俺にも貸してやー』



わあ!と思わずのけ反った。
いつの間に、目の前にいたの!?


『シン!』



驚いて顔を赤くするあたし。


シンは悪戯な笑いをしてきて、楽しそうケラケラと笑う。



もう!と怒ると、それをスルーして、

『それ、貸してや〜』といい。


そして、カイロとカイロを持つあたしの手も一緒に掴んで自分の頬へ持っていく。



それをスローモーションのように、あたしは見ていた。



『…あったかいなぁ〜……』


その暖かさに浸るように目を閉じながら呟く。

そしてカイロを握るあたしの手をぎゅっと握る。


シンの手は、冷たいと思った。

よく見るとこんな寒い日にマフラーも何にも付けていなし、服だって厚着とは言えない。



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