唯一愛した君へ
まったく…返してよあたしのカイロ。
手を差し出すけど、一向に返してくれる気配はなさそうだ。
もういいや…しょうがないからシンにあげる。
すりすりしては頬に持っていったり手を温っためたりするシン。
これがとても20歳すぎの成人にはとても見えない。
あ、でも鷹巳は…逆にあたしと同い年には見えなかったなぁ…。
『……なあ、優梨……、』
ん?と首をかしげると、さっきまですりすりしていたシンが手を止め、
真剣な顔をしてあたしを見ていた。
『どーしたのシン?』
『…………誰を待ってるん?』
………………
あたしは答えられなくて、無言になってしまった。
――梶貴鷹巳――
なんて、言えるはずがなかった。