唯一愛した君へ
ぎゅっと力強く握りしめたせいで、手の平に爪痕がついた。
『…そいつは幸せや。こんなに想われとって』
優しく微笑んでくれるから、思わず泣きそうになった。
……と、思ったら涙が落ちていた。
慌てて涙を隠そうとした。
そしたらシンが…
あたしを自分の方へ引き寄せて、背中を摩ってくれた。
――泣いていいから――
耳元でそう囁いた。
シンの胸に押し付けられてちょうど隠される。
周りには誰もあたしが泣いてるなんてわからないだろう。
少しだけ、胸を借りることにした。
この人に鷹巳の名前は出せないのに。
この人の前では涙を出してしまう。
シンが、本当に優しいから。
ついつい甘えてしまう。
それは駄目なこと…。
でもこの腕の
中は安心する―――