唯一愛した君へ





青信号がチカチカしだす。



あたしは焦って、更に必死に辺りを見渡す。



いない…

いない……

いない………


どこにもいないよ。


チカチカチカチカ、ピッ。
赤いランプが眩しく光る。




ねぇ鷹巳……

……今どこにいるの…?


もう、会えないのかな…?





誰かにパッと腕を取られ、引っ張られた――。


信号を走って真ん中から端へ、あたしを連れていく。



ああ、そういえば赤信号だったんだ……。



あたしは危うく死ぬ所だったのかもしれない。




端へ連れていかれ、パッと腕から手が離される。
誰かは下を向いてはあはあと、息を整えている。

そんなに必死だったのか?

顔が見えない誰か――。


少しの淡い期待をするあたし。




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