唯一愛した君へ
『そこらへんだよ』
そういうと、裕也はちょっと意外そうな顔をした。
『噴水で?』
うん、とあたしは頷く。
裕也はへぇ…と相槌を打った。
『あんな慎斗さん…初めてなんだ』
少しの間が出来てしまい困っていたあたしに、向かって囁くように呟いた。
『あんな?』
『…慎斗さんがこんなに女に入れ込んでるの…』
それは悪意ではなくて、本当に驚いているようなそんな感じ。
『だから優梨は…あの人にとって“特別”なんだ』
落とすように、口にした。
ぎゅっ、と締め付けられる感覚がした。
『慎斗さんはこんな族の総長なんかやってるけど…すごく優しくていい人なんだ…。外れた俺を助けてくれたし、チーム想いだし、本当に走るのが好きなだけなんだ……』
せつなげに、噛み締めるように、一つ一つ丁寧に言う裕也。