唯一愛した君へ
『あの幸せそうな顔を、あの人を、悲しませないで欲しいんだ…』
ツキッ――
心臓が震えて、あたしまで泣き出しそうな顔になった。
『なんで…あの人が関西弁訛りと標準語で分けて喋るか知ってる…?』
突然の質問に、泣き出しそうになりながら首を横に振る。
『族の世界は綺麗なコトばかりじゃない。時には喧嘩や、相手を傷つけてしまう。そんな時…あの人はけして訛りは使わない』
はっきりと裕也は答えを口にはしない。
だけど…それだけでなんとなくわかった気がする。
『…うん。
…シンが悲しむところは、あたしも見たくないよ』
涙が…ぽとっと、零れ落ちた。
でもすぐに、裕也が指で拭ってくれる。
『優梨泣かせたって慎斗さんにバレたら、俺ヤバイから』
ニコッと微笑んで、泣きそうな顔はなくなっていた。