唯一愛した君へ
『シンは、最初から名前を言って来たから素性知ってたんだ…』
そこで、一呼吸して。
『だから、近付きたくなかった……』
鷹巳と敵対してたって知ってたから、駄目だと思って一歩退いてたのに。
『でも、いつの間にかあたし、シンに救われてたんだ…』
涙が、声に混じる。
寒いあの噴水で、鷹巳を待つのと同時に…シンを待ち始める自分が存在してた。
『…鷹巳は関係ない。むしろ鷹巳が好きだったら、付き合ってない』
凛とした、決心した、
あたしの声ははっきりとしていた。
『………り…』
淋しげで…少し悲しそうで切なそうな顔をした由美子。
この時、あたしはその顔を、
また鷹巳の時みたいな人と付き合うあたしを心配して…
……なんだと思ってた。