唯一愛した君へ
『俺な?噴水のとこで優梨に初めて声かけたとき、ほんまは優梨のこと知っててん…』
え……?
びっくりして目を見開いた。
なんで……?
『ちょうど3年前位になるんかなあ……。ある噂が流れた。
――梶貴鷹巳に女が出来た――………ってな。
あいつは女嫌いで有名やったから、そっち関係にはかなりの出来事やったなあ』
その時を思い出すように耽って、フッと悲しそうに笑った。
あたしには、その事実が信じられなかった。
鷹巳が女嫌い…?
『そんでな?…それからちょっと経った頃な、偶然見かけたんや……。…あいつと優梨が一緒に歩いてるとこ』
口元を緩ませるわりに、シンは悲しそうに笑う。
『そんで、あの子なんか。って。
ほんまに噂通りでびっくりしたのと、物珍しさに女の子の顔…覚えててん』
まさか、出会うとは思わなかった―――…
息を吐き出すみたいに、その言葉は吐き出されて、空気に消えてった。