唯一愛した君へ
『何ヶ月か後――そのことを忘れかけてた頃に、噴水で見つけた……優梨を』
何故か震える声に、シンの手を握りしめようと思ったけど、今のあたしにはそんな資格はない気がして…手を出しかけたところで躊躇した。
『それから何度か見かけるようになって…気付いた。いつも――あいつがおらんこと。その子が悲しそうな顔、しとること』
あたしは、ただ聞いていた。
『話し掛けたんは…興味本位やってん……あいつが好きだったって女ってのは、どんな子なんかな?て…』
あの日――雨が降ってたよね。
シンは……傘を掛けてくれた。
びっくりしたんだ。
こんな雑踏の中、
こんな大雨の中、
あたしの存在に気付く人がいたことに。
嬉しかったよ……。
『まさか思わんかったなあ…』
悲しく、切なく揺れる瞳。
『けど――…信じてほしい。
気付いたら……優梨のこと、本気で好きになっとったんや』
目が真剣な瞳に変わって、あたしを真っ直ぐ見据える。
涙が出て……口を覆った。