唯一愛した君へ
だから。
『優梨に言わなくていいんですか…?』
優梨の友達の由美子にそういわれた時は、焦った。
『……榊原槙斗さんですか?』
優梨を待っていた時だった。
振り返ってその声の主をみた時は驚いた。
優梨と同い歳位の女子高生に、本名を知られていて、話し掛けられたからだ。
『誰?』
『優梨の友達です』
けどすぐ納得した。
なんだそうか…。
そして、安心した。
俺の正体を知っているわけではないんだと。
『…梶貴鷹巳のこと…優梨に言わなくていいんですか?』
予想もしていなかった次の言葉に、目を見開いた。
この子は、俺の正体を知っている。
そして、鷹巳のことも――。
『…なんで知ってるの?』
『…彼氏がそういう関係の人なんで』
俺らの間には、沈黙が流れた。