唯一愛した君へ
心臓の音が激しくなる。
幻では、ないか……?
そう疑ってしまう。
騒音が鳴り響く都会の中、あたしの耳は完全に周りの音をシャットアウトする。
ごちゃごちゃして目が痛くなるほどの景色の中、…まわりは全部ぼやけてんのに、あたしの視界には鷹巳だけはっきりと存在する。
2年前――
会いたいと、何度切望しただろう。
あのときの想いが、鮮明に戻ってくる。
ドキン、ドキン、
………緊張している。
あの時願って叶わなかったことが、突然叶ったから――…
いきなりだから、何をどうしていいかわからない。
あたしは、見つめたまま、立ち尽くしていた。
フゥー…と、
煙りが吐き出される。
灰色気体は、どこかへと呆気なく姿を消して、
―――…あたしの鼻をつく。
懐かしい匂い。
これは、鷹巳の匂い…。