唯一愛した君へ
『なぁ、あんたは何で捕まったんだよ?』
その声に、顔をあげた。
人が居たのか…、と今更気づく。
『俺はよぉ、ちっと人を殴っちまってなァ』
聞いてきたくせに、人の答えも待たずに自分のことを話しだす。
そいつをざっと見ると、そこら辺にいるチンピラといったところだった。
『相手がよぉ!弱っちいくせに調子こきやがって……』
興味もなく、そいつに向けた視線を元に戻した。
天井を見上げると、ただの灰色が広がるだけ…。
ガサッ
―――ポケットを、無意識に漁る。
だけど、なかった…。
ああ、そうか。
“ここ”に入れられる前に、全部取り上げられたのか…。