唯一愛した君へ
『ついでだし、名前呼んでみ?』
突然そう言われて、あたしは驚きで心臓が飛び出すかと思った。
『…なっ、なに…絶対いやっ!』
あたしの顔はみるみる沸騰したように赤くなっていく。
『嫌だ? 呼べよ』
いつものタバコを踏み消して、あたしに詰め寄ってくる。
『ちょ、ちょ!』
あたしはなんとか自分の手で少しなりとも鷹巳との距離を確保する。
『呼ーべ!』
『無理ぃー!』
あたしが叫んだら鷹巳は急に顔を引っ込め、溜め息をついた。
言わないあたしに幻滅した?
心配になって、逆にあたしが覗き込む。