唯一愛した君へ
『俺の名前知ってるか…?』
喋り出したのでホッとした。
『…梶貴…』
『下は?』
『鷹巳…っ』
ハッとしたようにあたしは、言った瞬間口を尖んがらせた。
『…しょーがないから、これで許すか…』
そう言って鷹巳はあたしの頭を撫でた。
こういう子供扱いっぽいことするから、気付かなかったんだよぅ…。
あたしが心の中でぶつぶつと文句を言っていると、顔を上げさせられた。
唇が重なった。
不意打ちすぎて、思わず驚いてしまった。
唇が離れたときはきっとまだあたしは、目を大きくしたまま鷹巳を見つめていたと思う。
だからかな?
そのとき、少しだけ鷹巳の笑いが切なそうに見えた――…