唯一愛した君へ
いくらでも隠してくれる。
そう思ったら、涙が久しぶりに落ちていった。
我慢していたわけでもない。
ただ出なかったんだ。
だけどその日は、涙が次から次へと流れきた。
こんな公衆の場で泣くのは、目立ってしまうだろう。
でも今日なら…
泣いても雨が隠してくれる。
――許してくれている。
思い切り泣いてしまった。
たくさん涙が落ちて顔がぐちゃぐちゃになっているかもしれない。
だけど今日なら――…
誰もが雨のせいだと思うだろう。
でも――…
いくら涙が落ちていっても
この痛みは取れない
だんだん何処が痛いのかもよく分からなくなってしまって
ただ苦しくて
『鷹巳』
…――と繰り返す。