唯一愛した君へ




目が合った瞬間、知らない人に戸惑うあたしに




『雨が好きなんかもしれんけど、さすがに風邪引くで?』



大阪弁訛りの入った心地よいリズムの喋り方をして。

そして、優しい笑顔をくれた。


整った顔立ちだなあ…とも思った。




『……ありがとう、ございます…』






うっすら…何処かで見覚えがある。




でもどこだか思い出せない。






『なんか悲しいことでもあったん?』




柔らかい優しい笑顔で聞いてくるから、初対面なのになぜか安心感がある。



彼は傘を持っていない右手で、あたしにハンカチを差し出して来た。




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