COLORS
2nd 上野 礼
真っ白な、俺の、世界。
飽きた、飽きた、
つまらない、つまらない、
だから……
偶然か必然か、そんな俺の退屈に、“ふざけないでよ!!”と、叫ぶ声が届いたのは、ある放課後のことだった。
何事かと、声の方へ耳を傾けると、俺が受け持つ3年C組の教室から、反省文を課した、前原すみれと坂下 良の言い合いが聞こえてきた。
「キスも、触られるのも、初めてだったってさぁ!!」
あまりの幼さに、微笑ましいどころか、ゲラゲラと笑い転げてしまいそうだった。
「ああそう、前原がねぇ……」
それを知った日から、俺は、前原から目が離せなくなった。
一人の男に愛され、一人の男の身体しか知らない、彼女が、とても、無垢で綺麗なものに見えたからだ。
その、無垢な心に、
踏み込んだら、どうなってしまうのだろう。
その、綺麗な身体に、
傷をつけたら、どうなってしまうのだろう。
考えれば、考えるほど、
わくわく、わくわくと、
高揚が止まらない。
そうして……
「あのさ、前原、この前の反省文、名前書いてなかったんだけど」
「名前ですか? そういえば……書いてなかったかも」
声をかけた、俺は、その反応に、またも、笑ってしまいそうになる。
「名前、書いてないと受け取れないよ」
「そうなんですか、じゃあ、今から書きます」
哀れ……
幼い、君は、気づけない。
「いや、今は手元にないから、放課後、美術科準備室に来てもらえる?」
「わかりました」
気づけないのだ、これみよがしな罠にさえ。
「 待 っ て る ね 」
退屈を持て余した心が、踊り出す。
ねぇ、遊ぼうよ、
幼い、君。
そして、埋めてみせてよ、
俺の、白、を。
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