COLORS



坂下は、俺を殴り飛ばした後、前原の手を取り、逃げるように、美術科準備室を出ていった。





「痛ってぇ……」





俺は、じんじんと痛む頬を、恨めしげに押さえている。





「自業自得」





後藤は、そんな俺に、冷ややかに返す。





「気づいてたなら黙ってろよ、わざわざ坂下にチクりやがって……そんなに俺の邪魔をしたいのかよ?」



「まさか。私は、先生を、助けてあげたかっただけ」





傷つくのは、前原だったはずなのに、





「助けてあげたかったって……何から?」





何故、俺が傷ついているのか、





「先生が、取り返しのつかないとこまで行かないように」







わからない、心底、わからない。







「何だよ、それ……」





また、白、だ。





「生徒に手を出して懲戒くらうより、一発殴られてチャラになるほうがマシでしょ」





白、に、襲われる。



白、白、白、



真っ白だ。





「俺がどうなろうと、おまえには関係ないだろ」



「そっか」





そうして、一人、残る、



真っ白な、世界。





「じゃあね、先生。お大事に」





真っ白な、俺の、世界。





飽きた、飽きた、



つまらない、つまらない、





だから、







「気に喰わねぇ……」





真っ白な肌を掻きむしって、





「……何もかも、気に喰わねぇ!!」







ただ、ひたすらに、



否定する、



白、を……







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