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そして、隣は“木野”さんだった。

名前からして女だと言うことは確定だが、私が仲良くできるかはまた別問題だ。

私はスマホをいじりながら、そっと木野さんを待った。

そのとき、ある女の子が私の席の隣に座った。

ほのかに香る花の匂い。

たぶん柔軟剤の匂いなんだろう。

そんなところが女子っぽかった。

「よろしくね。」

木野さんはいきなり言葉を発した。

それはもちろん私に向けて。

私はとっさにスマホから目を離し、それをポケットにしまう。

「あっ!うん。私、綾瀬花音。よろしくね。」

私はニコっと笑った。

「私は木野愛瑠(きの める)。愛瑠って呼んでくれればいいから…花音って呼んでいい?」

「うん。」

まだ予測にすぎないが、木野とは仲良くやっていけそうな気がした。

そして、そうなってほしいと心のどこかで願った。

今日はたったの3時間で終わり。

もちろん入学式も含めだ。

相変わらず校長の話は長かった。

説明会のときもずっと思っていたことだった。

それにその後の担任の話も割と長かった


でも、担任に悪い印象はなかった。

短い休み時間は木野とすごした。

私の何年かの経験から言うと、最初は特定の人と話し、確実な友だちを作ったほうがいいと思う。

あっちこっちに行くと、結局は自分の居場所は無くなっているもんだ。

その法則にのっとり、私は木野としか今日は話さなかった。

木野はもちろん実家住みで、通学手段は電車だそうだ。

けれどそこまで距離はなく、電車で15分ほどだという。

話の主な内容は中学時代のことだったが、聞いている限りだと木野は人付き合いが得意なほうではないらしい。

だから、中学のときも友だちと呼べるのは2人ほどしかいなかったそうだ。

でも、本当はもっと色んな人と話したいそうで、私はその一歩目になった。

木野はやはり話していても嫌味なところはない。

可愛らしいが決してブリっ子ではないし、意見もしっかりと言う。

むしろ私が1番求めていたタイプかもしれない。

クラスの帰りの会が終わり、途中まで木野と一緒に帰ろうと言っていた。

そのとき

「綾瀬ー帰ろうぜー」

と聞き覚えのある声が聞こえた。

…今原だ。
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