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今原は何も悪くない。

なのに、なぜ彼は自分自身を責めるのだろう…

「それでも…俺は嫌いになれなかったんだ…バカだよな…」

「そんなことないよ」

「えっ…」

私は咄嗟に口を出してしまった。

でも、そう思ったんだ。

あなたは悪くない。

「何できるかわかんないけど…私でいいなら…いつでも頼ってよ。」

私はそっと今原の手を握った。

その手はほのかに温かく、大きかった。

やっぱりいい人なんだよ。

そのとき、ぽっと手が濡れた。

静かな涙。

悲しみの塊であり、苦しみの塊であり、喜びの始まり。

そのあと話の続きを聞いた。

今原はそのあとも母親と暮らしたらしい。

でも、あのときの気持ちは消えるはずもなく…

しかし、母親のことを愛し続けていた…

そんな自分が嫌になって、ここに来たらしい。

自分を変えるために。

私と似てるようで私と正反対だった。

彼となら頑張っていけるのではないだろうか。
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