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「ねぇ!夏休みにみんなでプール行かないっ!?」

珍しく全員がそろった朝食のときだった。

望田がいきなりそう言ったのだ。

「おぉー!いいねー!」

倉谷は早くも賛成の意思を示していた。

私と今原は思わず目を合わせてしまった。

いつもは私たちに発言権はないに等しい。

目を合わせたのは、今日も口出しはしないようにしよう、という2人のサインだった。

そのときだった。

神無月が何かを飲み込み

「いいんじゃないか」

とぼそっと言ったのだ。

私は声には出さなかったが、驚いた。

神無月がこういう風に参加するのは初めてだからだ。

以前カラオケを誘ったとき

「人前で歌うのは嫌いだ。」

と言って来なかった。

ボーリングを誘ったとき

「運動は好きじゃない。」

と言って来なかった。

映画を誘ったとき

「映画は1人で集中して見たい。」

と言って来なかった。

断った理由が本当なのかは分からないが、とにかく付き合いが悪いのは事実だった。

驚いていたのはみな同じで、再び今原のほうを見ると目を丸くしていた。

それに対して望田は険しい顔をしていた。

「どうした?」

と神無月が言うと

「いや…悠紀がそんなこと言うなんて…雪でも降るんじゃないかと思って…」

と望田が真面目な顔で言った。

それがあまりにも真面目すぎて、私はクスクスと笑った。

笑いのツボも今原と同じようで、彼もまた笑いを必死にこらえていた。

そしていつものまとめ役。

「行くってことでいいな。」

神無月のその口調にも慣れてきた。

私たちはニコッと笑った。
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