Share Heart
私は絶句だった。

でも、大体予想はついた。

傷跡の種類、シェアハウスに入るための条件。

それだけで情報は十分だった。

「これは俺の母親がやった。」

神無月は淡々と、どこか悲しそうにそう言った。

そして、右手の人差し指で傷を1つ1つ指した。

「これも、これも…これも。全部母親の愛情表現だった。」

愛情表現。

傷をつけて、痛めつけることが?

そんなの違う。

でも、違うと言いきれるのは私が本当の愛を知ってるからだ。

「小さいときはただ耐えた。俺も母親のことを愛していたからだ。どんな痛みでも俺が母親を愛しているように、母親も俺を愛していると思っていた。でも、それは違かった。」

神無月は大人なのかもしれない。

辛い過去のはずなのに、無表情で話しを続ける。

気持ちを表すことはなかった。

「母親は俺を愛してなんかいなかった。」

「なんで…愛してないって思ったんですか…?」

「さあな。ただはっきりと分かったんだよ。相手を傷つけることは愛情表現じゃないって。」

私たちにとって当たり前のことでも、神無月にとっては当たり前じゃなかった。

< 61 / 111 >

この作品をシェア

pagetop