Share Heart
「俺が初めて家を出たのは中1のとき。あのときの俺は1人でも生きていけるって思ってたんだよ…ほんとバカだよな」

神無月は自分をあざ笑うようにフッと鼻を鳴らした。

「でもさ、ほんとは1人じゃ生きられなかったんだ。母親にすがるしかなかったんだよ。だから、すぐに家に帰った。」

生きるためには、痛みにも苦しみにも耐えなければいけなかった。

そういう生き方をしてきた人なんだ。

「受験のときは迷わず選んだ。なんたってシェアハウスがある。それに俺にとっては入りやすい高校だった。」

入りやすいってどういう意味だよ?

バカって言いたいのか?

「もちろん親には言ってない。」

「えっ?今でもですか?」

「あぁ。バレてるのかもしれないが、ひとまず俺は言ってない。もうあんな愛は俺には必要ないからな。」

言ったら連れ戻される。

それは私たちの共通点だった。

そして、神無月はもう一度傷を撫でる。

「この傷跡は俺の象徴だ。アホなことをした…ある意味での戒めだ。」

そんなこと…
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