Share Heart
「えっ?実家に帰る?」

私は翌日の朝、今原の部屋を訪ねた。

ちなみに美音はまだ熟睡中だ。

といってももう9時だが。

「なんで?」

「昨日美音から聞いたんだけど、父親に色々とバレちゃったみたいで…」

「だからって、わざわざ行くことはないだろ?電話でも…」

私は静かに首を振った。

「父は電話には出ないわ。ケータイを持ってはいるけれど、全て連絡は秘書にいくようになってるの。きっと用件を言ったら直接なんて話してくれない。」

「じゃあどうするんだよ?帰ったところでいなかったら」

「そこは美音がなんとかするって言ってくれたの。何をするのかは知らないけど」

私は不安でいっぱいだった。

父がどんな思いを持っているのか。

これからどうしようと考えているのか。

私は連れ戻そうと考えているのだろうと思っているけど、実際に父がそうなのかはわからない。

違うならそれはとても嬉しいけれど、連れ戻そうとしていて私が断ってシェアハウスに戻ってきたらその矛先は美音に向けられる。

美音はとても優しい子だ。

前向きで明るくて。

私と同じ経験をしても逃げ出さず、しっかり前だけを向いている美音は偉いと思う。

それに美音は家族の中で唯一と言っていい味方だ。

美音が苦しむようなことは絶対に避けたい。

でも、私には力がない。

何も持ってない。

どうしようもできない。

だから、そうなる前に片付けるんだ。
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