Share Heart
出発の日になった。

もちろん荷物は前日までにまとめてある。

準備万端だ。

この一週間、美音は私の家族と仲良くやっていた。

美音はフレンドリーな性格だから、仲良くなるのに時間はかからなかった。

1番は倉谷だった。

私は望田と1番仲良くなるかと思ったが、その望田がしばらく友だちの部屋にお泊まりをしに行き不在だったのだ。

当たり前なのかもしれないが、神無月とはほとんど会話していなかった。

神無月自体、ご飯のときにはリビングに出てくるものの他のときは部屋にこもりっぱなしだった。

今原はというと、バイトでほとんど上に同じだ。

しかし、たまにある休日には美音とも仲良くしていた。

そのころの私はというと美音の存在に少しだけイラつきながら、のんびりと夏休みを満喫していた。

愛瑠にも数回買い物や食事に誘われたが、なぜだか行く気になれなかった。

よっぽど家で読書をしたり、テレビや映画を見たほうが楽しかった。

たぶん、もともと社交的ではなかったからだろう。

あんな生活をしていたらそうなる。

美音がレアなだけだ。

勉強だけをやらされて、外出することでさえ許可をとらなければいけなくて。

めんどうになって、外に出かけることもしたくなくなるのだ。

もう元には戻りたくない。

だからこそ戦う。

それしか私には残されていないのだ。
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