Share Heart
電車に揺られ約1時間だ。

そう遠くない距離。

でも、1駅通過するたびに心が重くなっていく。

ため息の回数も多くなっていく。

「お姉ちゃん…大丈夫?」

「まぁ…ここまで来たんだから、帰れないし。」

「そうだけど…もし、今の生活を失うことになったらどうするの?」

「そんなことさせない。」

この質問にだけははっきりと答えられた。

「何が起こったとしても、私は帰る。今の私の家はあそこなの。」

美音は安心したように、にっこり笑った。


決心はしたけれど、やはり実家に帰るのは嫌だった。

父はもちろん、母も嫌いだ。

本来なら守ってくれるはずの大人が私にはいない。

だからって味方がいないわけでもない。

遠くてもみんなは私のことを見守ってくれているはずだ。

美音、今原、望田、倉谷…神無月。

必ず帰る。

戦ってみせる。
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