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インターホンを押すのは美音に任せた。

カメラがついているから会話をせずとも門が鍵が開く仕組みになっている。

改めて豪邸だと思った。

何円かけて建てられたとかは知らないけど、明らかに周囲の家とは作りが違う。

まず、門から玄関までの距離が遠い。

門がある家でも、玄関までは20メートルほどだろう。

だが、うちは200メートルはある。

その道沿いには母の好きな植物が色とりどりに咲いている。

それにうちの家は3階建てで広さは1階だけで7LDKある。

お金を持っているかは一目瞭然ってわけだ。

玄関のドアを開けると、まず見えたのはお馴染みの家政婦長だった。

「おかえりなさいませ花音お嬢様、美音お嬢様。」

深々と頭を下げていて、思わず頭を上げてって言いそうになった。

家にいた時はそんなこと思わなかった。

いるのが当たり前だったから。

存在していない、空気みたいだった。

そんなの嫌だな。

美音は慣れたように

「ただいま。カバンを美音の部屋に運んでおいて。あと、お姉ちゃんのも。」

と言った。

「かしこまりました。」

私はもう話せないや。

怖い。

何をしたわけじゃないけど、この人を使っていた。

パシリみたいだ、なんて思えてしまえて。

そんな風に思っているのに、使っていた自分が嫌で。

「お母様は?お父様は帰ってきた?」

「奥様は大広間にいらっしゃると思いますが、旦那様はまだご帰宅なさっておられません。」

「ありがとう。」

私たちはキャリーバッグを預け、大広間へと向かった。
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