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すでに私の荷物は運ばれていた。

美音が頼んだ家政婦が運んだのだろう。

私はベッドに寝っ転がった。

そして、1つため息をつく。

どうやったら父を納得させることができるのだろう。






そのころ、シェアハウスでは神無月の様子がおかしかった。

いつもは滅多に部屋から出てこない神無月だが、今日はトイレに行ったり水を飲んだり新聞を読んでみたりととにかく落ち着きがないのだ。

そんな様子を見ていた今原は

「悠紀さん、どうしたんでしょう?」

と心配そうに聞いた。

望田は

「きっと花音のこと心配してるのよ。悠紀は花音のこと気に入ってるみたいだし。」

とあっさり言った。

「そうなんですか!?それって好き…ってことですか?」

「んー私の予想はね。1年しか一緒にいないけど、逆に言えば1年も一緒にいたんだもん。あんな悠紀見たことないし…それにプールに行った日。あの日は特に変だった。」

「…変って…でも、綾瀬もあの日に何かあったっぽくて…」

そのとき2人はピンときたのだ。

「あの2人…そういう関係なのかな?」

今原と望田はニヤっと笑った。

「おいっ!」

突然、神無月が声を上げた。

「何よ?」

「花音はいつ帰ってくるんだ?」

「知らないよ…なるべく早く帰ってくるとは言ってたけど、正確な日数までは…」

「クソッ」

神無月はイラだっていた。

しかし、決して怒っているわけではない。

ただ、心配なのだ。

でも、それを表に出すことは神無月の理性に反することだった。

「そんなに心配なら、電話でもすればいいじゃん。」

望田がそう言った。

そうか!その手があったか!

神無月は部屋に戻り、スマートフォンで花音の番号を表示する。

あと1回タップすれば電話がかかる。

1度心を落ち着かせてから、電話をかけた。

5回くらいコール音がなり、花音が出た。

「もしもし…綾瀬ですけど…」

「花音!大丈夫かっ!?」

「大丈夫って…父だってそんな暴力みたいなことはしないですよ。」

「そうか…そうだよな。」

「どうかしたんですか?」

「えっ?」

「だって悠紀さんが電話してくるなんて初めてじゃないですか?」

「いや…その…心配になってだな…とにかく!早く帰ってこい!」

「あっ…はい。」

「お前が帰ってきたら、伝えるから…」

その瞬間電話をきった。

俺…何言ってんだ?

伝える?何を、だ?

いや、そんなことわかってる。

とっくのとうにわかっているんだ。

知らないフリをしているだけだ、気づかないフリをしているだけだ。

今の状態で隠せはしない。

真っ赤な顔。

















俺は…花音が好きだ。
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