☆腹黒王子に溺愛された悪女★
男は私を抱きしめたまま
少しだけ振り向いて、呆然としている相手の子に言った。
「僕、好きな子いるって言ったよね」
「う、嘘でしょ...」
「ごめんね、アヤちゃん」
「そんな...ッ」
女はグスッと鼻音を立てて、悔しそうに走り去ってしまった。
...こんな形に利用される日が来るとは。
ハァと小さなため息を吐いて、男は私から離れる。
落ち着いて顔を見ると、
爽やかなタイプの美男子...?
モテそうな感じの、いやモテるから襲われていたんだろうけど、そこらでは見ないイケメンだった。
「あ、櫻井さん悪かったね。おかげで何とかなった」
「いえ...てかコッチは無事じゃないんだけど。」
「え?」
私がジッと見つめる視線の先に、男も視線を移した。
その瞬間、ゲッて顔をする。
さっきまで食していたパンが、
急に抱きしめられた衝撃で足元に落ちたのだ。
「うわぁ、ごめん!」