ビオラ、すずらん、年下の君
「え、和香子…何?なんか俺の顔に付いてる?」
聡太君が口元を指先で拭いながら、片方の眉毛を引き絞る。
「あ、ああ。そんなことない。ゴメン、ゴメン」
私は慌てて笑顔を作った。
ついつい見惚れてしまったのだった。
「なんでもないよ。…あ、ところで食後のデザートにプリン食べない?プッチンプリンだけど、私好きなの」
「お、いいね。美味いよね」
聡太君が目尻を下げて笑う。本当爽やか。
プリンの上にはチェリーと生クリームを添えよう。
それを食べる君の姿が見たい、と思う私。幸せな晩餐。
2日後。土曜日のお休み。快晴。
久しぶりに愛犬鈴蘭の朝の散歩に出た。
せっかくの休みだから、寝坊したかったんだけど。
うちに来てから、ずっと鈴蘭の散歩担当してくれている聡太君が今日は夏季セミナーの為、6時半に家を出ていってしまった。
聡太君が出掛けた途端、鈴蘭は散歩ナシの危機を感じたのか、キュンキュン鳴きっぱなし。
ご近所迷惑だから、早く連れてってあげてとお母さんから無情の指令が出てしぶしぶ起床。
お爺ちゃんは自治会の旅行でいないし、私しかいなかったのだ。
眠い目を擦りながらも、外へ出てしまえば、懐かしい朝露の匂い。
午前7時。
小鳥のさえずり。朝露の香り。薄青く澄んだ空。生まれたての日常。