ビオラ、すずらん、年下の君
早朝って気持ちいいんだ。久しぶりに当たり前のことを思い出した。
早起きは3文の得だと昔の賢人は言ったのよね。
お散歩コースは鈴蘭のきまぐれにお任せ。まるで私の方がお散歩に連れ出してもらってるみたい。
あ、小さいひまわり、見つけた。
ピンク色と白のクラデーションの大輪の朝顔。
足元に小さな露草。
幼稚園の頃、この絹みたいな青でドレス作ってみたい、とか思ってたっけ。
華やかな女優みたいな真っ赤なグラジオラス。
優しい桃色のタチアオイも控えめながら負けていない。
この町はこんなに花で溢れていたんだ。いつも時間や予定ばかり気にしていて、目に入ることがなかった。
歩くうち、小学生時代のラジオ体操を思い出す。首からカード下げてお寺の前に集まったな…
最後の日にはノートが貰えて。
共働きが普通な今は、指導する大人がいないし、朝が遅い子供が増えたから、もうラジオ体操止めたんだよ、と前に町内会の役員をしていたお母さんが言っていたな。
そんなとりとめのないことを考えていたら、鈴蘭の足がぴたりと止まり、私はつんのめった。
「きゃ!急に止まらないで。蹴飛ばしそうになったじゃ…」
鈴蘭の顔を覗き込むと、その目はいつになく真剣だった。