ビオラ、すずらん、年下の君


何か言いたげな様子。鈴蘭に何か用かな?

「なんですか?」

私は笑顔を崩さずに訊いた。


「…吉田聡太君のことなんですけど」消え入りそうな声。

「えっ!」


思いがけなく聡太の名前をきいて鼓動が波打つ。


「吉田君、親の都合で知り合い…の家で暮らしてるってきいたんですけど、そのお家ってあなたの家ですか?」


喋るうち、元々のハキハキした口調を取り戻してる感じがした。年齢の割にしっかりした子なのかもしれない。


でも、いきなり過ぎてちょっと無礼な感じがしないでもない。


「ええ。そうですけど…ええと、あなたは聡太君のお友達?…まさか彼女さんとか?」


「ややや、違います!ただの同級生です!」


同級生だというその子の顔面は、トマトみたいに真っ赤になってしまった。最初の印象が消えて、なんだか可愛らしい、と思ってしまう。


「そうなの、ごめんなさい。もしかしたら毎朝、ワンちゃんの散歩で顔を合わせてたのかな?」


「いえ…私、隣町に住んでいるので、このルートは今日が初めてです。吉田君、毎朝犬を散歩させているって言ってたから来てみたんです。あなたにお話があって」


「え、私?」





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