ビオラ、すずらん、年下の君
江ノ島ONE DAY
快晴の朝なのに。
出社した途端、私はどん底に突き落とされた……
「佐原、今日のコーヒー、ちょっとぬるいな」
馬場友が淀んだ目で私をジロリと睨んだ。
「………」
私は無言でパソコンを立ち上げた。
今日、来客のアポはオールナッシング。1件も入っていない。
ということは、下手をすれば馬場友とこのワンルームマンションを改造した狭い事務所で1日2人きりで過ごすかもしれない、ということだ。
ガサガサと音がして、視線をやると暇を持て余した馬場友が早速スポーツ紙を広げていた。
コイツまた堂々と…長い新聞タイムが始まったよ。下手すれば午前中ずっとなんだから。
給料ドロボーもいい加減にしてよ…
呆れながらも、私は登録スタッフに仕事を紹介するメルマガ配信の準備に取り掛かった。
週2回、送信するのだけれど、今回新規のいい仕事がないので、あんまり反響ないだろうな……
と思いつつ、指を動かす。
送信ボタンをクリックした時。背後に人の気配を感じて私は振り向いた。
馬場友が立っていた。
「何か?」
見上げるようにして訊くと、馬場友はニヤリと笑った。
「佐原よ」
「何ですか?」
目つきが気持ち悪くて私は、キャスター付きの椅子ごと距離を取った。
「俺たち、チームなんだよ?俺たち、もうちょっと、なんつうかコミニュケーションていうの?取る必要あると思うけど?」
「……」